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INTERVIEW 森を守り、水を守る。

米沢市はものづくりが盛んな地域。この地で地元の資源の大切さを見つめ直し、新たな分野のものづくりに挑戦した企業に出会った。

株式会社ニューテックシンセイ 代表取締役 桒原 晃 氏

山形県米沢市は、最上川の源である吾妻連峰の裾野が広がる米沢盆地にあり、かつて上杉氏が治めたことで知られている。約200年前に上杉鷹山が殖産振興のため奨励した米沢織物に端を発し、繊維工業が盛んになった。また第二次世界大戦の際、疎開企業が集積、工業再配置促進法の誘導地域となった経緯もあり、ものづくりが盛んな地域である。

株式会社ニューテックシンセイは1980年の創業以来、米沢で情報通信機器の精密部品製造を主な事業として行ってきた。代表取締役の桒原晃さんは、約15年前に訪れた転機について語る。

「当社は以前から大手情報通信機器メーカーの仕事を主に受託していました。その企業が15年ほど前、中国の企業に買収され、危機感を抱きました。中国や東南アジアへ製造拠点が移されるようになっていて、自分たちもこのままではダメだと。そこで、新たな事業を作ろうという社内プロジェクトが立ち上がりました」。

新規事業を考える中で、問いかけが始まった。そもそも、なぜ自分たちは米沢でものづくりをしているのか。この場所にある意味合い、そしてこの地で続けていくためには何をするべきか。
「米沢には何があるかを考え、木にたどり着きました。盆地で山に囲まれていて森林が豊富じゃないか、と。当時、私も担当していた社員も子どもが小さかった。木に触れることで、子どもの心が豊かに育つのではという思いがあった。自然に触れさせたい気持ちもあり、木製玩具を作ることにしました」。

桒原さんたちは、木製ブロックの開発へ着手。部品加工の技術を応用し、試作したところ、簡単に形を作ることができた。しかし、木は時間が経つと縮み、変形してしまう。山形県の工業技術センターからアドバイスをもらったり、山形大学の教授と共同研究を行うなど、数年かけて開発。2012年に「MOKULOCK」ブランドの立ち上げと、商品の発売に漕ぎ着けた。米沢で育つさまざまな樹種を使用しており、木肌の色が異なるブロックは木で造られたとは思えないほど、カチッとハマる。結果として玩具だけでなくインテリアとしての需要もあり、幅広い店舗で取り扱いが生まれた。コロナ前には海外の展示会にも参加し、40カ国ほどに流通。その魅力がボーダレスであることを証明した。

8年ほど前から山形県と協定を結び、「絆の森プロジェクト」に参加。森林保全活動に乗り出した。
「米沢には最上川の源流があって、この辺りがダメになったら川もダメになってしまうんだと考えるようになりました。そのためにも、木を活用した事業だけでなく、木を生産する側にも携わりたい。林業は長いスパンで物事を捉えていて、今植えた木は次の世代の人たちへの贈り物になる。長い目でものを捉えて、次の世代へこの環境を残していきたいと思います」。
事業を通じて森を守り、水を守り、自分たちのいる環境を守る。次の世代に繋いでいくために。

「もくロック24ピース」(2,640円/税込)

「もくロック24ピース」(2,640円/税込)。天然の無垢材を使用したブロック。木の温もりや香りを感じられるだけでなく、湿度によってぶつかる音にも変化がある。

木で作った製品

くり、ぶな、さくら、しで、かば、みずき、すぎ、ほおのき、かえで、けやきなど10種類の樹木の間伐材を使用。ピースがぴったりはまるように乾燥の調整を行い、1/100mm単位まで厳密な切削を経て製造されている。従業員や地域の人とともに森林保全として植樹や下刈りなどを実施しており、使い終わったもくロックを山に返す活動も行う。

木のおもちゃ

株式会社
ニューテックシンセイ

株式会社ニューテックシンセイ 株式会社ニューテックシンセイ

主に情報通信機器や半導体関連装置の受託生産、木製品の製造販売を行う。もくロックは2015年にメゾン・エ・オブジェ パリで「グリーン・アイテナリー賞」を受賞するなど、数々の賞を受賞した。
米沢市花沢3075番地1 
☎︎0238-21-3155 https://nt-shinsei.com/newtechshinsei